オッズを見るのは、たいてい締切の間際だと思います。パドックを見て、返し馬を見て、最後にオッズを確認して馬券を買う。ですが私は、その日の勝負は朝8時40分に始まっていると考えています。
私の言う朝一オッズは、次のように定義されます。
朝一オッズ = レース当日、朝8時40分以前に取得されたオッズのうち、もっとも8時40分に近いもの
先に断っておくと、この時刻は私が独自に定めたものです。他の予想家の方は別の時間帯を採用されていますし、朝8時40分にしているのは、おそらく私だけだと思います。
ではなぜ8時40分なのか。朝一オッズを使って穴馬を発掘することと危険な人気馬をあぶり出すこと、この2つを目的に据えたうえで、複数のオッズ時刻で何年も定点観測を続けてきました。その結果、現時点でもっとも成績が安定するのが朝8時40分だった、というのが結論です。
数分ずれても結果は大きく変わりません。それでも時刻を一点に固定するのは、誰が見ても同じオッズを使い、同じ結論を再現できるようにするためです。基準が人によってばらつく理論は、そもそも検証のしようがありません。
もっとも、毎週末の朝8時40分に画面へ張りついて、全レース分のオッズを書き写すというのは現実的ではありません。せっかくの週末に早起きを義務にしたくもないでしょう。そこで私のサロンMONSTER倶楽部では、全レース全頭の朝一オッズを完全無料で公開しています。早起きも、スクリーンショットも、記録の手間も要りません。
古くから私の理論を追ってくださっている方は、ここで引っかかったはずです。私は長いあいだ、朝一オッズを午前9時40分と定義していました。
変わったのは市場のほうです。ネット投票が広く使われるようになり、馬券が買われる時間帯そのものが変わりました。改めて検証したところ、9時40分より8時40分のほうがよい、という結果になったのです。
ただし正直に言えば、両者に大きな精度差があるわけではありません。それなら早い時刻のほうが有利です。1時間早く数字が手に入れば、それだけ予想の検討時間が増えますし、第1レースにも余裕をもって間に合います。
私が朝一オッズを使う理由は、大きく3つです。レースの波乱度がわかる。穴馬が見つかる。危険な人気馬がわかる。しかも、どれも簡単に。
そのレースが荒れる余地のあるレースなのかどうかが、朝の時点でわかります。これがわかると、無駄な買い目を削れますし、予想作業そのものが効率化できます。堅く収まりそうなレースでむやみに穴馬を狙っても仕方がありませんし、逆もまた同じです。
これは言うまでもありません。シンプルに回収率へ直結します。
ここで、競馬という賭けの仕組みを確認しておきます。競馬はパリミュチュエル方式です。参加者から集めた投票をいったん一つにまとめ、そこから運営の取り分を引いた残りを、的中した人だけで分け合う。オッズは胴元が決めるのではなく、ほかの参加者がどこに賭けたかで決まります。
| 勝ったのが | その馬に集まった額 | 単勝オッズ | 買った人 | 1人あたりの利益 |
|---|---|---|---|---|
| 馬A | 10,000円 | 8.0倍 | 1名 | 70,000円 |
| 馬B | 20,000円 | 4.0倍 | 2名 | 30,000円 |
| 馬C | 70,000円 | 1.1倍 | 7名 | 1,000円 |
オッズは「払戻率 ÷ 支持率」で決まります(10円未満は切り捨て)。払戻率80%は単勝・複勝のもので、券種によって異なります。
いちばん右の列を見てください。7人が買った馬Cは、当たっても1人あたりの利益は1,000円(払戻11,000円)。1人しか買っていない馬Aは70,000円(払戻80,000円)。同じ「的中」でも、分ける人数でこれだけ変わります。
だから、みんなが買っている馬は当たっても分け前が小さい。逆にみんなが気づいていないけれど走る馬=穴馬を見つけることに、そのまま価値があります。運営の取り分という重りは、誰にも外せません。それでもプラスにするには、ほかの人と同じ判断をしていては足りないということです。
そして、これがかなり重要です。
いまのパリミュチュエル方式の話に従えば、大事なのはみんなが気づいていないことに気づくことでした。ならば、みんなが強いと思っている──つまり1番人気に推されているのに、実は弱い馬を見つけられることにも、同じだけの価値があるはずです。
どれくらいの価値があるのか。1番人気が4着以下に敗れたレースだけを取り出して、そのレースの2〜9番人気の成績を集計してみました。
| 単勝人気 | 勝率 | 連対率 | 複勝率 | 単回値 | 複回値 | 母数 |
|---|---|---|---|---|---|---|
| 2番人気 | 26.4% | 44.0% | 57.5% | 109 | 110 | 4,296 |
| 3番人気 | 18.5% | 35.6% | 49.3% | 108 | 112 | 4,296 |
| 4番人気 | 13.8% | 29.4% | 43.5% | 109 | 117 | 4,296 |
| 5番人気 | 11.8% | 23.7% | 35.4% | 128 | 115 | 4,296 |
| 6番人気 | 8.2% | 17.6% | 28.9% | 121 | 118 | 4,291 |
| 7番人気 | 6.7% | 14.3% | 23.7% | 134 | 121 | 4,275 |
| 8番人気 | 4.5% | 10.6% | 18.3% | 109 | 117 | 4,231 |
| 9番人気 | 3.5% | 7.5% | 13.5% | 120 | 108 | 4,140 |
| 2〜9番人気 計 | 11.7% | 22.9% | 33.9% | 117 | 115 | 34,121 |
集計対象:JRA全レース / 集計期間:2023年1月〜2026年8月 / 単勝1番人気が4着以下に敗れたレースのみを抽出
2番人気から9番人気まで、どこを買っても単回値・複回値がそろって100を超えています。ざっくり言えば、1番人気が飛ぶレースでは、それ以外のどの馬を買っても儲かってしまう。1番人気に集まった票が丸ごと外れるわけですから、当然といえば当然です。
比較のために、同じ期間で1番人気が3着以内に来たレースの2〜9番人気も出しておきます。1番人気が飛んだレースの単回値117に対し、来たレースは単回値56。同じ「2〜9番人気」でも、1番人気が来るか飛ぶかで、まるで別の馬券になります。
もっとも、終わってから「1番人気が飛んだレース」だけを拾えば、誰がやっても数字はよくなります。問題はそれを事前に見抜けるかです。

もし、事前に1番人気が飛ぶことがわかっていれば、そのレースは丸ごと妙味の塊になる。どれほど有利になるか、わかっていただけたと思います。
つまり危険な人気馬を1頭見抜くことは、穴馬を1頭見つけることと同じか、それ以上の意味を持つということです。
では実際のやり方に入ります。まずは波乱度、つまりレース選びです。
やることは拍子抜けするほど簡単で、朝一の単勝オッズが30.0倍以内の馬が何頭いるかを数えるだけです。
理屈はこうです。単勝オッズは「その馬が勝つ可能性」に対するカネの分布ですから、30倍以内というのは市場が「勝ち目あり」と見ている馬ということになります。その頭数が多いほど力が拮抗していて、抜けた存在がいない混戦だということです。混戦なら、着順は紛れます。
数えた頭数と、実際の荒れ方を突き合わせたものが次の表です。荒れたかどうかは三連複の配当が10,000円以上になった割合(万馬券率)で見ています。
| 朝一単勝30.0倍以内の頭数 | 万馬券率 | 平均配当 | 中央配当 | レース数 |
|---|---|---|---|---|
| 4頭以下 | 5.3% | 4,143円 | 980円 | 94 |
| 5頭 | 8.7% | 5,805円 | 1,035円 | 380 |
| 6頭 | 11.5% | 7,129円 | 1,360円 | 941 |
| 7頭 | 16.7% | 10,170円 | 2,210円 | 1,579 |
| 8頭 | 23.7% | 14,228円 | 3,360円 | 2,169 |
| 9頭 | 30.6% | 19,094円 | 4,870円 | 2,467 |
| 10頭 | 39.6% | 24,464円 | 6,950円 | 2,070 |
| 11頭 | 48.3% | 33,470円 | 9,380円 | 1,475 |
| 12頭 | 53.3% | 32,920円 | 11,245円 | 798 |
| 13頭 | 57.1% | 33,598円 | 13,575円 | 340 |
| 14頭以上 | 71.3% | 46,532円 | 16,360円 | 122 |
| 合計 | 31.5% | 19,840円 | 4,680円 | 12,435 |
集計対象:JRA全レース / 集計期間:2023年1月〜2026年8月 / 荒れ方は三連複の配当で評価
見事なまでの右肩上がりです。4頭以下なら万馬券率5.3%・中央配当980円。14頭以上なら万馬券率71.3%・中央配当16,360円。数を数えるだけで、そのレースの底が割れるかどうかがここまで分かれます。
ここで出走頭数の影響が気になった方がいると思います。頭数が少なければ30倍以内の馬もそれだけ少なくなるのだから、当たり前の話ではないか、と。念のため16〜18頭立てのレースだけで集計し直しました。5頭なら万馬券率13.8%、14頭以上なら73.6%。同じ頭数どうしで比べても、傾向はそのまま出ます。
1レースだけ当たった例を挙げても意味がありません。上の表のいちばん上といちばん下で、実際に何が起きたかを並べます。
同じ三連複で、273,970円と140円。約2,000倍の差です。どちらも朝8時40分に、30倍以内の頭数を数えるだけで見当がついていました。
次は穴馬です。こちらも難しいことはしません。朝一で単勝1番人気だった馬が、締切直前でどれだけ人気を落としているかを見ます。
| 直前の単勝人気 | 勝率 | 連対率 | 複勝率 | 単回値 | 複回値 | 母数 |
|---|---|---|---|---|---|---|
| 直前も1番人気 | 34.8% | 54.5% | 66.8% | 78 | 85 | 9,385 |
| 直前2番人気 | 24.0% | 40.8% | 54.3% | 88 | 86 | 1,778 |
| 直前3番人気 | 17.5% | 31.6% | 45.8% | 90 | 88 | 674 |
| 直前4番人気以下 | 12.3% | 25.5% | 34.9% | 100 | 90 | 478 |
| 合計 | 31.4% | 50.2% | 62.6% | 81 | 86 | 12,315 |
集計対象:JRA全レース / 集計期間:2023年1月〜2026年8月 / 朝一単勝1番人気だった馬を、締切直前の単勝人気で分類
注目すべきは単回値の並びです。直前でも1番人気のままだった馬は78。ところが直前で人気を落とすほど78→88→90と伸びていき、直前4番人気以下まで落ちた馬は単回値100。ベタ買いで損益分岐点に届きます。
やることは、直前では人気がないけれど、朝一では1番人気だった馬を買う。それだけです。穴馬を見つけるために一晩中、競馬新聞やデータとにらめっこする必要はありません。朝の数字を1つ見るだけで済みます。
2025年3月8日の2勝クラス。朝の評価から見れば、完全に置き去りにされた形でした。
最後は、冒頭で「かなり重要」と書いた危険な人気馬です。
ここでは、締切直前に単勝1.0〜1.9倍まで支持された馬だけを取り出します。競馬ファンの多くが「これは買い」と判断する、圧倒的な1番人気です。この馬たちを、朝一の単勝オッズがいくらだったかで分けてみます。
| 朝一の単勝オッズ | 勝率 | 連対率 | 複勝率 | 単回値 | 複回値 | 母数 |
|---|---|---|---|---|---|---|
| 1.0〜1.4倍 | 63.5% | 82.0% | 89.6% | 83 | 96 | 405 |
| 1.5〜1.9倍 | 50.2% | 72.2% | 83.0% | 80 | 91 | 1,106 |
| 2.0〜2.4倍 | 42.8% | 65.1% | 77.9% | 76 | 87 | 921 |
| 2.5〜2.9倍 | 38.0% | 60.7% | 70.1% | 71 | 80 | 374 |
| 3.0倍〜 | 32.2% | 52.6% | 65.8% | 63 | 76 | 152 |
| 合計 | 47.2% | 68.9% | 79.8% | 77 | 88 | 2,958 |
集計対象:JRA全レース / 集計期間:2023年1月〜2026年8月 / 締切直前の単勝オッズが1.0〜1.9倍だった馬を、朝一の単勝オッズで分類
同じ「直前1倍台」なのに、景色がまるで違います。朝一から1.4倍以下に支持されていた馬の勝率は63.5%。一方、朝一で3.0倍以上だった馬は32.2%。ほぼ2倍の差です。
この圧倒的人気は本当に来るのか──その問いに答えるために、走破タイムを精査し、血統表を開き、枠順や展開やトラックバイアスまで検討する必要はありません。朝一の単勝オッズを1つ見るだけで、かなりの精度で答えが出ます。
朝一オッズは、レース当日朝8時40分のオッズです。私が独自に定めた基準で、何年もの定点観測の末にたどり着いた時刻です。
そして私がこれを使う理由は3つでした。
どれも、朝の数字をいくつか見るだけで済みます。特別な道具も、長い作業時間も要りません。必要なのは、8時40分のオッズを知っていることだけです。
朝一オッズは、MONSTER倶楽部が土日の全レース分を毎週無料で公開しています。この記事で見てきた単勝・複勝・馬連が、8時40分基準でそろっています。早起きしてオッズ画面を書き写す必要はありません。
そして、この記事で扱ったのは入口の部分です。レースの選び方から穴馬の絞り込み、実際の買い目の組み立てまで、朝一オッズをひととおり学びたい方は、拙著『朝一オッズの教科書』にすべて書いてあります。