オッズを人気順に上から並べていくと、数字はだいたいなだらかに増えていきます。ところが、どこかで一度だけガクッと開く場所が現れる。この段差のことを、私はオッズ断層と呼んでいます。
券種ごとにオッズを人気順で並べたとき、1つ上の順位との差が大きく開いている場所。それが断層です。
断層の手前と後では、オッズに大きな乖離があります。ということは、市場は手前のグループと後のグループで、能力に差があると判断しているということになります。誰かが引いた線ではありません。何万人分もの投票が積み上がった結果として、そこに境目ができている。
では、具体的にどれくらい開けば断層と呼べるのか。ここは予想家によって見解が分かれるところです。私の結論は次のとおりです。
| 呼び方 | 1つ上の順位との比(下位のオッズ ÷ 上位のオッズ) |
|---|---|
| ミニ断層 | 1.4倍以上 1.5倍未満 |
| 断層 | 1.5倍以上 |
| 大断層 | 2.0倍以上(断層のうち、とくに大きいもの) |
そしてオッズの取得時刻は朝一(朝8時40分)とします。この時刻の意味と、なぜその時間なのかは別記事「朝一オッズとは」に書きました。まだお読みでなければ、先にそちらを見ていただくと話が早いです。
実際に見てみましょう。2026年の宝塚記念、17頭立て。朝一の複勝オッズを人気順に並べたものです(複勝は幅で表示されるので、下限の値を使います)。
| 順位 | 馬名 | 朝一複勝 | 1つ上との比 | 着順 |
|---|---|---|---|---|
| 1位 | クロワデュノール | 1.4 | ― | 2着 |
| 2位 | ダノンデサイル | 1.8 | 1.29倍 | 3着 |
| 3位 | メイショウタバル | 1.9 | 1.06倍 | 1着 |
| 4位 | ミュージアムマイル | 2.2 | 1.16倍 | 9着 |
| 5位 | レガレイラ | 2.2 | 1.00倍 | 7着 |
| 6位大断層 | ビザンチンドリーム | 4.9 | 2.23倍 | 15着 |
| 7位 | タガノデュード | 4.9 | 1.00倍 | 5着 |
| 8位 | コスモキュランダ | 4.9 | 1.00倍 | 4着 |
| 9位 | ミクニインスパイア | 6.8 | 1.39倍 | 12着 |
10位以下は省略。朝一複勝オッズは下限の値。「1つ上との比」は、その馬のオッズ ÷ 1つ上の順位の馬のオッズ。
1位から5位までは1.4倍から2.2倍まで、ゆるやかに増えています。ところが5位の2.2倍から6位の4.9倍へ、いきなり2.23倍に開きます。これが大断層です。市場はここに「上の5頭と、それ以外」という線を引いていました。
結果は、1着・2着・3着がすべて断層の手前の5頭から出ました。断層の後ろからは、掲示板にすら1頭も入っていません。
やること自体は割り算だけです。ですが、これを全レース・全頭・3券種ぶんやるとなると話が変わります。土日で最大72レース、1レース平均14頭。毎週それを朝の限られた時間でこなすのは、現実的ではありません。
そこでMONSTER倶楽部では、この断層を全レース全頭ぶん、画面に横線として自動で引いています。しかも無料です。割り算をする必要はありません。線が引いてあるところが断層です。
ここまでは「市場がそう判断している」という話でした。では、その判断は当たっているのか。
宝塚記念の1例だけでは何も言えません。そこで、条件をそろえて検証しました。
つまり4位と5位の間の段差だけを、純粋に取り出したということです。結果がこちらです。
| 4位→5位の開き方 | 3〜4位の複勝率 | 5〜6位の複勝率 | 差 | 母数(頭) | レース数 |
|---|---|---|---|---|---|
| 1.0〜1.4倍未満 | 34.9% | 25.4% | 9.5pt | 各15,078 | 7,539 |
| 1.4〜1.5倍未満(ミニ断層) | 39.8% | 22.3% | 17.5pt | 各758 | 379 |
| 1.5〜2.0倍未満(断層) | 45.6% | 19.8% | 25.8pt | 各1,154 | 577 |
| 2.0倍以上(大断層) | 54.0% | 12.1% | 41.9pt | 各124 | 62 |
集計対象:中央競馬の平地全レース / 集計期間:2023年1月〜2026年8月 / 複勝オッズは朝一の下限値 / 母数は3〜4位・5〜6位それぞれの延べ頭数
4位と5位の間がなだらかなとき(1.0〜1.4倍未満)、3〜4位と5〜6位の複勝率の差は9.5ポイントしかありません。順位が近いのだから、当然です。
ところが開きが大きくなるにつれ、差は17.5ポイント、25.8ポイントと広がっていきます。そして大断層まで開くと、手前は複勝率54.0%、後ろは12.1%。その差は41.9ポイントに達します。
境界線を挟んでいるのは、順位でいえば4位と5位。たった1つ隣どうしです。それだけの違いで、手前のグループ(3〜4位)と後ろのグループ(5〜6位)では、3着以内に来る確率が54.0%と12.1%──4倍以上に開きます。

言い換えれば、朝8時40分の時点で市場が下した判断は、正しかったということです。まだ返し馬も見ていない、パドックも歩いていない時間の話ですが。
大断層の区分は62レース・124頭と母数が小さく、他の区分ほど数字が安定しません。傾向の向きを示すものとしてご覧ください。
断層の手前と後で能力差があるのなら、逆のことも言えます。断層が1本もないレースは、市場が能力差を見いだせていないということです。上から下までなだらかに並んでいて、どこにも切れ目がない。そういうレースは、荒れます。
朝一の複勝オッズに断層が何本あったかで分けて、実際の荒れ方を見たものが次の表です。荒れたかどうかは三連複の配当が10,000円以上になった割合(万馬券率)で測っています。
| 複勝断層の本数 | 万馬券率 | 平均配当 | 中央配当 | レース数 | 平均頭数 |
|---|---|---|---|---|---|
| 0本 | 38.1% | 25,645円 | 6,270円 | 2,509 | 14.0頭 |
| 1本 | 34.6% | 21,427円 | 5,280円 | 4,943 | 13.9頭 |
| 2本 | 28.6% | 17,354円 | 4,340円 | 3,192 | 14.1頭 |
| 3本 | 23.1% | 16,348円 | 3,200円 | 938 | 14.2頭 |
| 4本以上 | 17.0% | 7,049円 | 3,200円 | 106 | 15.0頭 |
集計対象:中央競馬の平地全レース(三連複の払戻があるもの)/ 集計期間:2023年1月〜2026年8月 / 断層は朝一複勝オッズの全順位で計上 / 全体の万馬券率は32.6%
断層0本なら万馬券率38.1%、4本以上なら17.0%。中央配当でいえば6,270円と3,200円で、倍近い開きがあります。
この表でひとつ確かめておきたいのが、出走頭数の影響です。頭数が多ければ荒れやすいのは当たり前ですし、断層の本数も増えそうに思えます。ですが右端を見ていただくと、どの区分も平均14頭前後でほぼ揃っています。念のため頭数ごとに分けて集計し直しても、傾向は変わりませんでした。16〜18頭立てに限れば、断層0本で49.2%、4本以上で19.1%です。
1.7倍から10.6倍まで、どこにも1.5倍以上の開きがありません。切れ目なしの14頭。
2位↔3位(1.67倍)、10位↔11位(2.07倍)、11位↔12位(1.56倍)、14位↔15位(1.66倍)。市場は4回も線を引いていました。
209,730円と600円。同じ三連複で、350倍の開きがあります。どちらも朝8時40分の複勝オッズに、線が何本引けるかを数えるだけで見当がついていました。
古くからオッズ分析をされている方には、いまさらの話かもしれません。断層の手前にいる馬は、よく馬券に絡む。これは長く言われてきたことですし、この記事の2つ目の表がまさにそれを示しています。
ただし、ひとつ申し上げておきます。断層の手前だからといって、無条件に狙っても期待値は上がりません。
断層手前の馬の好走率が上がる局面と、そうではない局面があります。断層が何位のあたりに出ているのか。券種は何か。そのレースがどういう性格なのか。そうした条件によって、同じ「断層手前」でも意味がまるで変わってきます。
そのあたりは拙著『朝一オッズの教科書』にまとめてありますので、実際に馬券へ落とし込みたい方はそちらを参考にしてください。
断層を自分で計算するのは、正直なところ現実的ではありません。MONSTER倶楽部では、土日の全レース分の断層を、画面に横線として毎週無料で引いています。単勝・複勝・馬連の3券種ぶんです。割り算をする必要はありません。