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オッズ断層とは

市場が引いた境界線を、実データで検証する
蘆口真史
蘆口 真史あしぐち・まさし

2005年に「朝一オッズ」という言葉とともに競馬界へデビュー。以来20年、オッズに落ちるカネの動きだけを追い続けてきた。オッズ断層をはじめとするオッズ理論の著書多数。競馬サロン「MONSTER倶楽部」主宰。

オッズを人気順に上から並べていくと、数字はだいたいなだらかに増えていきます。ところが、どこかで一度だけガクッと開く場所が現れる。この段差のことを、私はオッズ断層と呼んでいます。

この記事でわかること
  1. 断層とは何か、どこからが断層か1つ上の順位との比が1.5倍以上。2.0倍以上なら大断層、1.4倍台ならミニ断層と呼び分けています。
  2. 断層の手前と後で、好走率がまるで違う市場が引いた線は正しいのか。約8,500レースで検証しました。
  3. 断層の本数で、レースの荒れ方が読める断層のないレースほど荒れます。数えるだけで見当がつきます。

断層とは

券種ごとにオッズを人気順で並べたとき、1つ上の順位との差が大きく開いている場所。それが断層です。

断層の手前と後では、オッズに大きな乖離があります。ということは、市場は手前のグループと後のグループで、能力に差があると判断しているということになります。誰かが引いた線ではありません。何万人分もの投票が積み上がった結果として、そこに境目ができている。

どこからが断層か

では、具体的にどれくらい開けば断層と呼べるのか。ここは予想家によって見解が分かれるところです。私の結論は次のとおりです。

呼び方1つ上の順位との比(下位のオッズ ÷ 上位のオッズ)
ミニ断層1.4倍以上 1.5倍未満
断層1.5倍以上
大断層2.0倍以上(断層のうち、とくに大きいもの)

そしてオッズの取得時刻は朝一(朝8時40分)とします。この時刻の意味と、なぜその時間なのかは別記事「朝一オッズとは」に書きました。まだお読みでなければ、先にそちらを見ていただくと話が早いです。

実例:宝塚記念(2026年)

実際に見てみましょう。2026年の宝塚記念、17頭立て。朝一の複勝オッズを人気順に並べたものです(複勝は幅で表示されるので、下限の値を使います)。

順位馬名朝一複勝1つ上との比着順
1位クロワデュノール1.4―2着
2位ダノンデサイル1.81.29倍3着
3位メイショウタバル1.91.06倍1着
4位ミュージアムマイル2.21.16倍9着
5位レガレイラ2.21.00倍7着
6位大断層ビザンチンドリーム4.92.23倍15着
7位タガノデュード4.91.00倍5着
8位コスモキュランダ4.91.00倍4着
9位ミクニインスパイア6.81.39倍12着

10位以下は省略。朝一複勝オッズは下限の値。「1つ上との比」は、その馬のオッズ ÷ 1つ上の順位の馬のオッズ。

1位から5位までは1.4倍から2.2倍まで、ゆるやかに増えています。ところが5位の2.2倍から6位の4.9倍へ、いきなり2.23倍に開きます。これが大断層です。市場はここに「上の5頭と、それ以外」という線を引いていました。

結果は、1着・2着・3着がすべて断層の手前の5頭から出ました。断層の後ろからは、掲示板にすら1頭も入っていません。

ただし、自分で計算するのは相当に面倒です

やること自体は割り算だけです。ですが、これを全レース・全頭・3券種ぶんやるとなると話が変わります。土日で最大72レース、1レース平均14頭。毎週それを朝の限られた時間でこなすのは、現実的ではありません。

そこでMONSTER倶楽部では、この断層を全レース全頭ぶん、画面に横線として自動で引いています。しかも無料です。割り算をする必要はありません。線が引いてあるところが断層です。

断層の手前と後では、好走率が異なる

ここまでは「市場がそう判断している」という話でした。では、その判断は当たっているのか。

宝塚記念の1例だけでは何も言えません。そこで、条件をそろえて検証しました。

検証の条件
  1. 1位から4位までの間に、断層が1本もない上位の並びがなだらかなレースだけを取り出します。
  2. 5位と6位の間にも、断層がない下側の切れ目の影響も排除します。
  3. そのうえで、4位と5位の間の開き方だけを変えて比べるここにだけ差がある状態を作り、3〜4位の成績と5〜6位の成績を突き合わせます。

つまり4位と5位の間の段差だけを、純粋に取り出したということです。結果がこちらです。

4位→5位の開き方3〜4位の複勝率5〜6位の複勝率差母数(頭)レース数
1.0〜1.4倍未満34.9%25.4%9.5pt各15,0787,539
1.4〜1.5倍未満(ミニ断層)39.8%22.3%17.5pt各758379
1.5〜2.0倍未満(断層)45.6%19.8%25.8pt各1,154577
2.0倍以上(大断層)54.0%12.1%41.9pt各12462

集計対象:中央競馬の平地全レース / 集計期間:2023年1月〜2026年8月 / 複勝オッズは朝一の下限値 / 母数は3〜4位・5〜6位それぞれの延べ頭数

4位と5位の間がなだらかなとき(1.0〜1.4倍未満)、3〜4位と5〜6位の複勝率の差は9.5ポイントしかありません。順位が近いのだから、当然です。

ところが開きが大きくなるにつれ、差は17.5ポイント、25.8ポイントと広がっていきます。そして大断層まで開くと、手前は複勝率54.0%、後ろは12.1%。その差は41.9ポイントに達します。

境界線を挟んでいるのは、順位でいえば4位と5位。たった1つ隣どうしです。それだけの違いで、手前のグループ(3〜4位)と後ろのグループ(5〜6位)では、3着以内に来る確率が54.0%と12.1%──4倍以上に開きます。

言い換えれば、朝8時40分の時点で市場が下した判断は、正しかったということです。まだ返し馬も見ていない、パドックも歩いていない時間の話ですが。

大断層の区分は62レース・124頭と母数が小さく、他の区分ほど数字が安定しません。傾向の向きを示すものとしてご覧ください。

断層の本数で、レースの荒れ方が読める

断層の手前と後で能力差があるのなら、逆のことも言えます。断層が1本もないレースは、市場が能力差を見いだせていないということです。上から下までなだらかに並んでいて、どこにも切れ目がない。そういうレースは、荒れます。

朝一の複勝オッズに断層が何本あったかで分けて、実際の荒れ方を見たものが次の表です。荒れたかどうかは三連複の配当が10,000円以上になった割合(万馬券率)で測っています。

複勝断層の本数万馬券率平均配当中央配当レース数平均頭数
0本38.1%25,645円6,270円2,50914.0頭
1本34.6%21,427円5,280円4,94313.9頭
2本28.6%17,354円4,340円3,19214.1頭
3本23.1%16,348円3,200円93814.2頭
4本以上17.0%7,049円3,200円10615.0頭

集計対象:中央競馬の平地全レース(三連複の払戻があるもの)/ 集計期間:2023年1月〜2026年8月 / 断層は朝一複勝オッズの全順位で計上 / 全体の万馬券率は32.6%

断層0本なら万馬券率38.1%、4本以上なら17.0%。中央配当でいえば6,270円と3,200円で、倍近い開きがあります。

この表でひとつ確かめておきたいのが、出走頭数の影響です。頭数が多ければ荒れやすいのは当たり前ですし、断層の本数も増えそうに思えます。ですが右端を見ていただくと、どの区分も平均14頭前後でほぼ揃っています。念のため頭数ごとに分けて集計し直しても、傾向は変わりませんでした。16〜18頭立てに限れば、断層0本で49.2%、4本以上で19.1%です。

京成杯(G3) / 2025年1月19日・中山 芝2000m・14頭立て
朝一の複勝オッズ(下限)を人気順に並べたもの
81.7 91.7 141.9 52.5 12.7 63.2 113.2 123.7 44.2 35.3 135.4 26.8 79.0 1010.6

1.7倍から10.6倍まで、どこにも1.5倍以上の開きがありません。切れ目なしの14頭。

朝一の複勝断層
0本
どこにも切れ目なし
表の目安
万馬券率 38.1%
0本のゾーン
結果
209,730円
1着は複勝12位の馬
ジャパンカップ(G1) / 2023年11月26日・東京 芝2400m・18頭立て
朝一の複勝オッズ(下限)を人気順に並べたもの。赤い線が断層
21.1 11.2 1.67倍 172.0 52.1 102.2 32.4 143.4 83.7 95.2 75.7 2.07倍 1811.8 1.56倍 1518.4 1618.9 425.6 1.66倍 642.6 1242.6 1345.6 1150.7

2位↔3位(1.67倍)、10位↔11位(2.07倍)、11位↔12位(1.56倍)、14位↔15位(1.66倍)。市場は4回も線を引いていました。

朝一の複勝断層
4本
市場が何度も線を引いた
表の目安
万馬券率 17.0%
4本以上のゾーン
結果
600円
複勝1〜3位がそのまま1〜3着

209,730円と600円。同じ三連複で、350倍の開きがあります。どちらも朝8時40分の複勝オッズに、線が何本引けるかを数えるだけで見当がついていました。

断層の手前の馬には、チャンスがある

古くからオッズ分析をされている方には、いまさらの話かもしれません。断層の手前にいる馬は、よく馬券に絡む。これは長く言われてきたことですし、この記事の2つ目の表がまさにそれを示しています。

ただし、ひとつ申し上げておきます。断層の手前だからといって、無条件に狙っても期待値は上がりません。

断層手前の馬の好走率が上がる局面と、そうではない局面があります。断層が何位のあたりに出ているのか。券種は何か。そのレースがどういう性格なのか。そうした条件によって、同じ「断層手前」でも意味がまるで変わってきます。

そのあたりは拙著『朝一オッズの教科書』にまとめてありますので、実際に馬券へ落とし込みたい方はそちらを参考にしてください。

まとめ

最後に、実際に使うために

断層を自分で計算するのは、正直なところ現実的ではありません。MONSTER倶楽部では、土日の全レース分の断層を、画面に横線として毎週無料で引いています。単勝・複勝・馬連の3券種ぶんです。割り算をする必要はありません。

本記事は情報提供を目的としており、的中・利益を保証するものではありません。掲載の数値は過去の実測値です。馬券のご購入はご自身の判断でお願いします(20歳未満の方は馬券を購入できません)。© 2026 MONSTER倶楽部 本サイト / 初めての方へ / よくある質問