締切前にオッズを見て、単勝15倍の馬を買う。レースはその馬が1着。喜んで払戻画面を開くと、確定オッズは7.5倍。「半分になっている」と力が抜ける──あの「ガックリ」の裏に、宝が埋まっています。
覚える用語は3つだけです。
| 用語 | 意味 |
|---|---|
| 締切直前オッズ | 馬券発売の締切直前、最後に確認できる時点のオッズ。買うかどうかを判断するとき、目の前に出ているあの数字 |
| 確定オッズ | レース確定後に発表される、払戻の基準となる最終的なオッズ |
| 下落率 | 締切直前オッズ ÷ 確定オッズ |
冒頭の例で計算してみます。締切直前15.0倍、確定7.5倍なら、15.0 ÷ 7.5 = 2.00。下落率2.00です。
下落率は券種ごとに計算します。単勝はそのまま。複勝はオッズに幅があるので、下限の値どうしを比べます。馬連はもともと1頭ぶんのオッズが存在しないので、その馬が絡む馬連から1頭ぶんに換算した馬連換算オッズを使います。
不思議に思った方もいるはずです。締切と同時に投票は止まるのに、なぜそのあとオッズが変わるのか。
答えはタイムラグです。締切間際に投じられた大量の馬券は、あなたが購入ボタンを押した瞬間のオッズ画面には、まだ反映されていません。それが集計され切って初めて、確定オッズという形で姿を現します。
近年、AIで各馬の勝率を算出し、実際のオッズと比べて期待値の高い馬だけを狙い撃つ買い方が急速に広がりました。期待値は的中率 × オッズで計算します。つまり計算に使うオッズは、確定に近いほど正確になる。だから彼らは締切ぎりぎりまで待って、そこでまとめて投じます。1レースに投じる金額も小さくありません。
ネット投票が当たり前になったことで、売上のかなりの部分が締切間際のわずか数分に集中するようになりました。つまり急落とは、勝算を計算し尽くしたカネが、最後の最後に流れ込んだ痕跡だということです。

あなたが「オッズが下がった」とガックリしているその裏で、誰かが確信を持って大金を入れている。そう考えると、見え方が変わってきませんか。
ここまでは理屈の話です。では、本当にそうなっているのか。
2023年1月から2026年8月まで、中央競馬の平地全レース・のべ16万6千件を超える出走データを、単勝の下落率で分けて集計しました。
| 単勝の下落率 | 勝率 | 連対率 | 複勝率 | 単回値 | 複回値 | 母数 |
|---|---|---|---|---|---|---|
| 1.00未満(確定にかけてオッズが上がった馬) | 4.0% | 8.7% | 14.0% | 61 | 63 | 112,348 |
| 1.00〜1.10未満 | 14.9% | 27.3% | 38.0% | 86 | 82 | 24,939 |
| 1.10〜1.20未満 | 13.2% | 26.2% | 37.6% | 91 | 90 | 12,557 |
| 1.20〜1.30未満 | 13.7% | 26.4% | 38.6% | 96 | 99 | 6,919 |
| 1.30〜1.50未満 | 13.4% | 25.9% | 38.1% | 115 | 109 | 5,998 |
| 1.50〜1.70未満 | 13.0% | 23.7% | 34.7% | 123 | 112 | 2,226 |
| 1.70以上 | 9.5% | 20.7% | 32.8% | 104 | 112 | 1,789 |
集計対象:中央競馬の平地全レース / 集計期間:2023年1月〜2026年8月 / 下落率=締切直前の単勝オッズ ÷ 確定単勝オッズ / 単回値・複回値は100円ずつ買った場合の回収額(100が損益分岐点)
まず、いちばん上の行を見てください。確定でオッズが上がった馬(=相対的に買われなかった馬)は、勝率4.0%・単回値61。ここは徹底的に走りません。
そして下へ進むほど回収値が上がっていきます。1.30を超えたあたりから単回値が100を突破し、1.50〜1.70では123。控除率という重りを背負う馬券の世界で、機械的に分けただけの区分がここまで来るのは、そう多くありません。
ひとつ補っておくと、下落率1.00以上のゾーンで伸びているのは回収値のほうです。勝率は13%前後でほぼ横ばい。つまり急落が教えてくれるのは「よく勝つ馬」ではなく、同じくらい勝つなら、より配当のつく馬だということです。
ここが急落オッズの最大の特徴であり、多くの人が思考を止めてしまうところです。
下落率は、確定オッズが出るまで計算できません。確定オッズが決まるのは投票が締め切られてレースが始まったあとですから、その馬券にはどうやっても間に合わない。自分の買った馬が急落していれば「買いは正解だった」と分かる、答え合わせにしか使えないように見えます。
ここで多くの人は「使えない指標だ」と思考を止めてしまいます。ですが私は、そこで止めませんでした。
考えてみてください。締切間際に大金が入ったということは、その馬を高く評価した計算があったということです。人気薄に限った話ではありません。1番人気でも急落は起きます。
そして、その評価はレース1回で消えるものではないはずです。ならば前走で大きく急落していた馬は、今走でも狙えるのではないか。
検証した結果、前走で急落していた馬は、次走でも高い回収率を狙えることが分かりました。今日のレースで見るのは、今日の急落ではなく各馬の前走の下落率ということになります。
ただし、これには条件があります。どの券種の急落を見るのか。前走のオッズがどのあたりだった馬なら有効で、どこからは見送るべきなのか。無条件に前走の急落馬を買っても、期待値は上がりません。そのあたりの基準は拙著『急落オッズの教科書』にまとめてありますので、実際に馬券へ落とし込みたい方はそちらを参考にしてください。
では、そのレースの急落は捨てるのかというと、そうではありません。そのレースで最後にカネがどこへ動いたかを振り返る材料になります。このコラムの急落オッズ回顧は、まさにその答え合わせを毎回やっているシリーズです。
前走の下落率を自分で調べるとなると、出走馬全頭ぶん、前走のオッズを遡って記録しておく必要があります。現実的ではありません。MONSTER倶楽部では、各馬の前走オッズ下落率を全レース全頭ぶん公開しています。単勝・複勝は無料で、馬連は無料会員登録で見られます。